家庭訪問の目的は、ご本人を外につなげることを第一に考えています。最近は、様々な手法の訪問支援をおこなっている団体がありあます。それぞれに特徴や対象者のニーズにあった手法があります。メンタルフレンド的な手法や家庭教師的なスタイルなど様々です。中には最初から脅迫的に迫るような手法をとる団体も有ります。
ひきこもり状況で本当に必要な訪問支援とは何であるのかを考える上で重要なのは、ひきこもり当事者が何を求めているかです。ひきこもり当事者の最大の心配は、自分自身の将来です。表面上は諦めたようなコメントを出す方も多いですが、それは“何を”“どのように”行動してよいか分からないからです。そこに焦点を絞っていくことがポイントとなります。より具体的に、本人が「これなら、やってみてももいいかな?何とかなるかな?」と思える情報をいかにと届けていくかが必要な支援となります。
しかしながら、訪問支援をしてもらうことを当事者に伝え「ハイ、わかりました」と言うことはなかなかありません。
「余計なことするんじゃない」と拒否したり沈黙してしまうことなど良く有ります。
そのような状態で、「本当に訪問支援なんてしていいのか?」と考えるのが保護者です。
しかなしながら、ひきこもりの最大の問題点でも触れましたが、親子の共依存関係こそがひきこもりの根底にある大きな問題です。そこには客観的な評価をする視点も必要になります。本人が根底に抱えている問題と表面上の対応に大きな隔たりがあることは良くあることです。親はそこが見えにくくなっています。
訪問支援では、保護者相談でお聴きした情報をもとに対応していきます。
訪問するための土台作り
親が子どものことを煩わしくなって第三者に頼むではなく、本当に現状や将来を安じているからこそ相談をしたり、訪問支援を依頼しようと考えていることを伝えていただきます。本人たちは、ひきこもりの現状が良い状況じゃないことは理解していて、自力で生きていくことも難しいことを分かっています。一番、不安に感じるの親に見離されるのではないかということです。
基本的には、親子で話し合いが出来ない状況であれば、第三者を入れて、未来に向かっての情報を仕入れながら、将来のことを考えてもらわなければならないことを伝えていただきます。
ここで、親の想いをしっかり伝えることが後々重要な鍵となってきます。曖昧な表現や良いことだけ言うのは逆に本人を不安にさせてしまいます。
訪問の日時を必ず伝える
訪問支援を開始する際には、必ず訪問日時を本人に伝えていただきます。
事前に伝えると精神的に不安定になるのではないか?暴れたらどうしようか?と考える保護者も多くいます。
本人のことなので必ず伝えていただきます。伝えないことのリスクのほうが問題です。
伝えることで、一瞬は動揺しますが、早めに伝えることで、本人にも考える時間が出来ます。「親が勝手にやっていることだから関係ない・・」「出かけてしまえばいいや・・」など気持ちを切り替えていくことが出来ます。抜打ちで訪問するとなると、本人は何も考える間も与えられないままの状況になりパニック状態になりかねません。
ご本人に対しては筋を通しておく必要があります。
訪問開始
長期のひきこもりになると、会えないところからの訪問が多くなります。当然、本人の承諾を得ることは難しいことです。最初は無理のないところから緩やかにアプローチしていきます。本人が部屋から出て来ないのであれば、初回から声をかけたりはしません。
いくら「無理なことはしないよ」と事前に話をしていても、本人的には何をされるんだろうとの、恐怖や不安を抱えています。少なくとも、無理やり何かをさせることはないんだということを感じてもらうところから始めます。会えないにしても、タイミングを見ながら、具体的な情報を扉越しに提供しつつ、本人の内面で葛藤してもらえる機会を作っていきます。耳に色々な情報が入り込んでくれば、本人も考えるしかなくなります。その過程の中で、未来に向かっての思考を開始してもらい、整理をつけていってもらいます。
会えない状況が続くのであれば、会うきっかけを話の中で構築していきます。そして、本人に適した自立への道筋に誘導していきます。(YSC参照)